『ダウントン・アビー』の名場面、原語のセリフには、字幕には収まらなかった一語があります。
シーズン2フィナーレ、雪の庭園でのプロポーズシーン。
メアリーが自分の状況を皮肉を交えて言ったセリフ。
字幕ではこう訳されています。
「軽々しく言わないで。駅の荷物係よりも大変な重荷なのよ。」
でも実際の英語のセリフでは、メアリーは「駅の荷物係」ではなく、はっきりとロンドンの「キングス・クロス駅」という、具体的な駅の名前を口にしています。
Matthew:Would you stay? If I asked you to.
Mary:Matthew, you don't mean that. You know yourself we carry more luggage than the porters at King's Cross!
字幕には、文字数の厳しい制約があり、一瞬で意味が伝わることが最優先。日本の視聴者にはなじみのない駅名を、「駅の荷物係」という誰にでも通じる言葉に置き換えられる。でも、原語のほうには、その駅名が残っています
なぜ、わざわざ「キングス・クロス」なのか。
それは、メアリーがロンドンへ行くたびに、必ず降り立つ駅だったから。よそごとの例えではなく、自分がいつも目にしている、あの日常の景色を引き合いに出す。それだけで、この一言に、彼女の本心がぐっと乗ってきます。
駅のポーターは、仕事が終われば荷物を下ろせる。でもメアリーが背負っている過去は、一生ついてくる――そんな彼女の本音が、たった一つの固有名詞に詰まっているんです。
字幕や吹き替えでは、文字数の制限はもちろん、理解しやすくするために、当然のことではあるのですが省略されちゃうんですよね。
こんなふうに、『ダウントン・アビー』のセリフには、字幕の尺には収まらない”言葉”が、たくさん隠れています。
ちょっとしたことではありますが、私はこれがとても面白く大切なものだと思ってます。
固有名詞ひとつ、言い回しひとつに、当時のイギリスの階級意識や文化、時代の空気がそのまま入っているからです。
それに気づいた瞬間、同じシーンなのに、まったく違って見えてくるんです!!
このメルマガでは、セリフに出てくる地名、呼び方、言い回しを1通に1つ取り上げて、なぜその言葉が選ばれたのかを解いていきます。
『ダウントン・アビー』、もう一度、違う目で見てみたくないですか?
このメルマガを始めた理由
ドラマや映画を見ていて、私が感じる「一番面白い瞬間」。
それは、作品の見え方がガラッと変わる瞬間です。
ここには私の普段の物の見方の癖みたいなものが多いに関係しています。
「なぜこの人はこんな言い方をしたんだろう?」
「どうしてこの場所なんだろう?」
「なんでこの名前が出てくるの?」
そんなふうに、ふと引っかかることがしょっちゅうあります。
そのまま通り過ぎればいいのに、気になってしまって調べてしまう。すると──全然関係ないと思っていたことが、歴史や文学、実在の人物と突然つながるんです。思いもよらないことだったり、前から気になっていたことの回答だったり。
このえっ、そういうことだったの!?ってなるあの瞬間。バラバラだった点と点が、急に一本の線になる感覚。
あの感じが、本当にたまらなく好きなんです。
そこから、作品の見え方が変わってしまう。同じシーンなのに、まったく違って見えてくる。
この体験を、もっとたくさんの人と一緒に味わいたいと思うようになりました。
その入り口として、特に面白いと思っているのが「セリフ」です。
前にも書きましたが、セリフには面白いものがたくさん詰まっているのに、字幕や吹き替えでは伝わりきらないことが本当に多いんです。またちゃんと訳されていても、その背景を知らないと本当の意味がわからないことがたくさん。
その一言を少し知るだけで、作品の見え方が変わることがあるのに。あー、これは本当にもったいない!って思っちゃって!!
それがこのメルマガを始めた理由。
実際、海外の大学でも、ダウントン・アビーが真剣な研究対象として扱われることがあるくらい、奥の深い作品なんです。
だから、「ダウントン・アビー」という素晴らしい作品を入り口にして、今後はそこから他の作品にも広げながら、イギリスの文化や歴史を一緒にのぞいていきたいと思っています。
メルマガでは、作品に出てくる“たった一言”とか“何気ない名前”とか、そこに引っかかってしまったものを、ちゃんと掘っていきます。
作品の見方を変えちゃうような体験を通して、英国という国を知る入口にしていきたいと思っています
メルマガの内容
- 『ダウントン・アビー』の名場面のセリフを、1通ごとに1つ深掘り
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「ヴァイオレットおばさまの愛ある毒舌集」をプレゼント。
「ダウントン・アビー」現在のクローリー伯爵の母である、前伯爵夫人ヴァイオレット(マギー・スミスが演じています)。彼女は切れ味鋭い毒舌の数々でドラマの中でも、そして見ている私たちをも、時に驚かせ、笑わせてくれます。
でも彼女の言葉には、ただの意地悪ではなく、伝統を重んじ、崩れゆく貴族社会の中で最後まで貴族らしくあろうとする、美学が詰まっています。そんな彼女のセリフは、調べれば調べるほど面白いものに溢れていたので、その中から厳選してまとめました。
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