公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。
イギリスに関する本、ニュース、映画や小説などに触れていると爵位が結構な頻度で登場します。
王室を筆頭に貴族たちが領地の大部分を所有して、彼らが政治や文化を動かしていた時代が長く、今でも貴族制度が続いているからです。
貴族構造や決まり事はとても複雑なのですが、少し知っておくだけで本や映画などが俄然愉しめるようになります。
英国貴族制度の決まりごと
公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。
この5等爵の明確な序列がヨーロッパ各地の貴族にも広がっていったのは、現在のドイツにザクセン王朝のオットー1世(在位936−973年)の時代。
古代ローマ帝国にも起源がある、もともとは役職名だったものがそのまま「爵位」として現在も使われているのです。
英国での貴族制度の始まりは、ウィリアム1世(1066-1087)がもたらしました。
1066年にヘイスティングの戦いに勝利したノルマンディー王が、ウィリアム1世としてイングランド王に即位したからです。フランスの政治・宮廷文化をイングランドに持ち込みました。
貴族構造はとても複雑です。その理由は最上層の貴族階級がふくれあがり、ピラミッド形の階級構造が破綻することないようにルールが決められたから。
ここではそのいくつかの決まりごとをご紹介します。
・爵位の保持は当主1人のみ
・爵位継承はもっとも近い血筋の年長の男子
・爵位は下位から順次上位のものが与えられるため複数持っている場合もある
・相続人である息子は父親の二番目の爵位を名乗るが法的なものではない。
・所領も相続人の息子のみで次男、三男には全くなし。
王室や貴族が登場する小説やドラマの中では、結婚、子孫を残すこと、男の子の誕生が大きな問題として登場するのはこんな決まり事があるためです。
そして、先祖からの財産がバラバラに分散してしまわないように爵位や所領を引き継ぐことができるのは相続人だけ。
長男と次男以下の子供たち、女の子への待遇にものすごく開きがあって大変だなぁと感じますよね。受け取れるものがないのも辛いが、全てを受け取った相続人も重大な責任感がのしかかり大変です・・・
称号について
次に複雑なのは、称号が男性と女性が違うこと。
「公爵」に相当するのは "Duke" で、「公爵夫人」は "Duchess" です。
たとえば、「ノーサンバーランド公爵」は "Duke of Northumberland"、彼の妻は "Duchess of Northumberland" と呼ばれます。
称号・男性 | 称号・女性 | |
公爵 | Duke | Duchess |
侯爵 | Marquess | Marchioness |
伯爵 | Earl | Countess |
子爵 | Viscount | Viscountess |
男爵 | Baron | Baroness |
称号と苗字
次に混乱してしまうのは呼称や苗字のこと。私もよく誰のことを言っているの??と混乱してしまいます。
爵位の呼称は苗字とは別に、自分の本拠地の地名や近い地名をとることが多いです。
例えばアニック・キャッスルやザイオン・ハウスを所有しているノーサンバーランド公爵 (The Duke of Northumberland)の苗字はパーシー(Percy)です。
ちょっとここでWikipediaを例にして、何度もご登場いただいているノーサンバーランド公爵を見てみましょう!
Ralph George Algernon Percy, 12th Duke of Northumberland, DL (born 16 November 1956), styled Lord Ralph Percy until 1995, is a British hereditary peer and rural landowner and current head of the House of Percy.
Wikipediaより
「ラルフ・ジョージ・アルジャーノン・パーシー、第12代ノーサンバーランド公爵、DL(1956年11月16日生まれ)は、1995年までラルフ卿と称されていました。彼はイギリスの世襲貴族であり、地主でもあり、現在パーシー家の家長です。」
と書かれています。
現在のノーサンバーランド公爵は第12代。(12th Duke of Northumberland)
名前はラルフ・ジョージ・アルジャーノン・パーシーで、パーシー家の家長です。
元々次男で誕生されたのでラルフ卿と呼ばれていましたが、1995年に長男のヘンリー第11代ノーサンバーランド公爵が亡くなったために、第12代として爵位を引き継ぎました。
12代公爵には4人の子供、キャサリン・パーシー嬢 、ジョージ・パーシー(パーシー伯爵 )、メリッサ・トラフェレット嬢、 マックス・パーシー卿がいますが、現在の推定相続人は長男のジョージ・パーシーです。
George Dominic Percy, Earl Percy (born 4 May 1984), is a British businessman and the heir apparent to the Dukedom of Northumberland.
wikipediaより
「ジョージ・ドミニク・パーシー、ノーサンバーランド公爵位継承者伯爵(1984年5月4日生まれ)は、イギリスの実業家で、ノーサンバーランド公爵位の推定相続人です。」
まとめ
複雑な貴族制度ですが、少し頭に入れておくだけで情報の理解度がぐんと上がりますよ。
さらに貴族ではないが爵位と同じように首相の推薦によって授与されるバロネット(Baronet)とナイト(Knight)という一代限りのものがあります。
しっかりと調査して書いていますが、もし間違っているところを見つけられましたら教えていただけると大変助かります。
この記事で何度もご登場いただいたノーサンバーランド公爵の所領地に立つアニック・キャッスル。訪問記もありますのでこちらもぜひお楽しみください!!