アニック・キャッスル(アニック城)(Alnwick Castle)はイングランドの北東部ノーサンバーランドに位置する歴史的で広大な領地に建つ城。城という名前の通りかつての要塞としての巨大で勇ましい建物ですが、中は宮殿のような空間が広がる、ノーサンバーランド公爵一家の邸宅です。
約1000年という長い歴史を持つ城は、イギリスの歴史と深く関わっている場所だけでなく、その他にもいろんな魅力を持っています。
ここは今でもノーサンバーランド公爵のプライベート空間でもあり、見学者はお屋敷での生活を垣間見ることができます。代々貴族の人々が芸術品をどのように室内に展示して楽しんでいたかも見ることができます。
でも、歴史的遺産という存在だけでなく、現在のわたしたちともたっぷりとつながっています。
その一つは映画やドラマのロケ地として。特に映画「ハリー・ポッター」のシリーズ2作では、ホグワース魔法学校の一部として使われてからは、多くの観光客が集まっています。ハリーたちがほうき乗りを学んだシーンを撮影したことから、アニック城では今でもほうき乗りレッスンが行われてるんですよ笑
実際に訪問して気づいたのは、豪華なステートルーム(正式の場面でお客様をもてなす部屋)や、ロケ地を楽しみにきた人も、歴史好きも、緑いっぱいの環境を楽しみたい人も、子供も大人も楽しめるようなアミューズメントパークのような存在であるということ。
歴史を簡単に振り返りながら、アニックキャッスルの魅力をお伝えします!
アニック・キャッスルの見どころ
広大な領地、巨大な建物、長い歴史を持つ場所。
アニック城には見どころが溢れています。
現在もノーサンバラーランド公爵の邸宅
アニック城は、私のように観光客として訪問することができるます。さらにロケ地としても使われていますが、今でもノーサンバーランド公爵の邸宅でもあります。今回アニック城に来てみて、ああ・・・ここは今も人が住んでいる場所なんだなと感じたことがいくつかありました。
豪華な部屋にさりげなく置いてあったクッション
残念ながら邸宅内は写真撮影厳禁なので、映像でお見せすることができないのですが、豪華なライブラリーのキャビネットの上には、飲みかけのアルコールボトルがたくさんとても自然に置いてありました。その中には日本のウィスキーも。(私はそこまで気がつかなくて、妹の旦那さんが気がついてくれました。だから銘柄の確認が取れず・・・)
そして窓に近い位置には、ファーのカバーの大きなクッションが床に4つ置いてありました。きっとここに座わってお酒を飲んだり、話したりして過ごされてるんだろうなぁとイメージが浮かびました。
公爵夫人は動物好き
部屋の中にはたくさんの動物の剥製があり、特にネズミがたくさんあった笑
一緒に行った姪っ子が気づき教えてくれたのですが、最初ちょっとギョッとして見ていたらガイドさんが声をかけてくれました。「公爵夫人が好きでコレクションしているんですよ」と。「ほかの部屋にも置いてあるから探して見てね!」と子供にも室内ツアーを楽しんでもらえるような声かけが印象的でした。置いてあるのが隅の方や下の方だと、子供が見つけるにぴったりなのかも。
公爵一家と働く人々
各部屋にいるガイドさんたちが、すごくプロフェッショナルな雰囲気で、公爵とともにこの場所で働くことに誇りを持っていることが感じられたこと。パリットしたユニフォームを着ているスマートな中年の男性たちが渋くてとても素敵だったのです(笑)
室内だけでなく、無料のガイドツアーがいくつかあって、私たちも参加。そうすると部屋で案内してくれたガイドさんが登場して、建物や城の歴史をたっぷりと紹介してくれました。
大学で勉強している時から、いくつかカントリーハウスを回ってきたのですが、個人のお宅なのだと感じたのは初めてのような気がします。かつて誰かが住んでいた邸宅博物館というものではなく、今も生きている博物館なのだと感じたのが理由です。
私は実際に公爵夫妻にお会いしたわけではないのですが、働いているスタッフの方々から公爵夫妻の姿を感じられる、それがアニック城のもう一つの良さだと思いました。公爵家族とスタッフの方の距離が近いのかなぁ。
1000年の歴史をもつアニック城
アニック城はまず、ノルマン人の砦として11世紀に建設されました。
1066年はイギリスの歴史の中で重要な転換期の一つ。北フランスノルマンディー公国のノルマンディー公ウィリアムがイングランドを征服しノルマン朝を開きました。
ノルマン人とは、9世紀と10世紀に現在のフランス北部のノルマンディー地方に定住した北欧のヴァイキング起源の人々を指します。彼らはキリスト教を受け入れ、フランク王国との関係を深め、次第にヨーロッパの他の部分と同化して行きました。その一つはイングランド征服でした。
そう、アニック城はこの時代に建てられたところから歴史がスタートしているのです。この場所はスコットランドとイングランドの境に近いので、スコットランドからの防御としての重要な場所でした。要塞として激しい戦いが何度もあり、城はそんな歴史を今も残しています。
イギリスの歴史に密着した城
代々一族で受け継がれてきたアニック城の現在の当主は、第12代ノーサンバーランド公爵のヘンリー・パーシー氏。パーシー一族は北部イングランドで最も影響力のある貴族の一つで、多くの歴史的出来事に関与してきました。
パーシー家の創設者は、William de Percy(1096年に死去)で、ウィリアム1世とともにノルマンディーからやってきた人物。アニック城だけでなく、一族の歴史も1000年前まで遡ることができるわけです・・・
長いですね・・・
そのパーシー家がアニック城を買ってから当主となったのは1309年。それから700年以上、アニック城内はパーシー家の歴史とともに息づいている。それが今も続いているのがすごくないですか?
パーシー家の有名な人物を3人紹介します。
ヘンリー・パーシー (1st Earl of Northumberland):
14世紀後半から15世紀初頭にかけて活躍したノーサンバーランド伯爵。彼はリチャード2世(1377-1399年)の対立者として知られ、ヘンリー4世(1399-1413年)の即位を助けたが、後に王との関係が悪化し、彼に対する反乱を企てました。
ヘンリー・パーシー (2nd Earl of Northumberland):
最初に紹介したヘンリーの息子で、通称「Hotspur ホットスパー」として知られています。彼は勇敢な戦士としての評価が高く、特にスコットランドとの境界地帯での戦いで名を馳せました。シェイクスピアの『ヘンリー四世』でも彼の名は取り上げられているんです。
トマス・パーシー (7th Earl of Northumberland):
16世紀に活躍したノーサンバーランド伯爵。3度の結婚でイングランド最有力貴族へと。スコットランド女王メアリーとの結婚を進めて、エリザベス1世に警戒される。さらにカトリックの権利を求めてエリザベス1世に対する「北部の陰謀」を主導したが、反乱は失敗し、トマスは処刑された。
(公爵位を受けるのは18世紀に入ってからのことです。)
豪華な邸宅
城の内部は外からはちょっと想像できないくらい、豪華で色に満ち溢れた宮殿スタイルの部屋がたくさん。
時代は1850年代、第4代ノーサンバーランド公爵アルジャーノン・パーシーは、城の修復に着手しました。外装工事にイギリス人建築家アンソニー・サルヴィン。インテリアは16世紀のローマの宮殿にヒントをもらい、イタリア人建築家コメンダトール・ルイジ・カニーナを起用しました。
内部の撮影はできなかったので部屋の写真をご紹介することができないのですが、こちらのアニック城の公式サイトで中の様子を見てください!6つの部屋が写真で紹介されています。
https://www.alnwickcastle.com/explore/the-history/the-state-rooms
まずは入り口を入ってすぐの、The Lower Guard Chamber(下衛兵の間)
18世紀後半に作られた武器や装身具、パーシー家義勇軍の素晴らしい展示品で訪問者を迎えてくれます。
さらにここから階段を上がっていくと、
The Upper Guard Chamber(上の衛兵の間)へ。
大理石の正義とブリタニアの荘厳な像がある上衛兵の間です。
そして、The Library(ライブラリー)。
約15,000冊の蔵書を誇る壮麗な図書館は、19世紀の修復時に増築された大きな塔の1階全体を占めています。 一族が滞在する際にお気に入りの部屋です。先ほどウィスキーが並べられたり、クッションがあったと紹介した部屋がこちらです。こちらにも動物の剥製が数体置かれていて、子供たちは一生懸命探していました。
The Drawing Room(応接間)
彫刻、絵画、金箔が施された天井、絵画のフリーズ、シルクの壁掛け、彫刻の施された扉、大理石の暖炉、巨大な鏡があり、イタリアン・デザインの影響を受け部屋です。
The Dining Room(ダイニングルーム)
この大広間は、中世以来、城の生活の中心でした。 現在もパーシー家のみなさんが定期的に使用しているそうです。
The China Gallery(陶磁器・ギャラリー)
2006年、マイセン、チェルシー、パリの陶磁器の重要なコレクションが、17~18世紀のヨーロッパの磁器宮殿のインテリア・デザインにインスピレーションを得た方法で展示されました。美しい柄の陶磁器がセットでたくさん並べてありました。
さらに部屋の様子をじっくり見てみたい方は、ドラマ『ダウントンアビー』をご覧になってみてください。ライブラリー、応接間、ダイニングルームなどが登場して、このような場所ではどんな暮らしが送られているのかイメージしやすいと思います。
ロケ地としてのアニック城
今では映画「ハリー・ポッター」の魔法の舞台としても知られるアニック城。2001年の映画「ハリー・ポッターと賢者の石」と2002年の映画「ハリー・ポッターと秘密の部屋」で、魔法のホグワーツ魔法魔術学校として登場しました。
アウターベイリー呼ばれている城の外側の広場は、ハリーと同級生たちがマダム・フーチと一緒にほうき飛行を学んだ場所です。他にもハリーは、アウターベイリーで魔法界のスポーツ、クィディッチのルールを学びました。
中庭やベイリーは、ホグワーツの先生や生徒たちが日常の活動を行うシーンの撮影にも使われているそうです。
ハリーとロンがウィーズリー家の空飛ぶ車で墜落したのはインナーベイリー。ホグワーツからハグリッドの小屋や禁じられた森へと向かう出入口としては、ライオンアーチが使われています。
映画は色々な場所をうまく繋げて作られているので、アニック城の場所と映画のシーンを照らし合わすのって結構大変です笑
映画は色々な場所をうまく繋げて作られているので、アニック城の場所と映画のシーンを照らし合わすのって結構大変です笑
アニック城は、「ダウントン・アビー」のドラマでの使われていて、先ほどご紹介したステートルームがたっぷりと登場しています。実際に私たちが見ることができる展示スペースとしてではなく、ちゃんとした部屋として見ることができるので美しさが際立つ!
庭園やアミューズメント施設など幅広い世代も楽しめる大型施設
広い敷地内には、ガーデンや公園、池などが広がっています。ここでいう敷地とは、アニック城から見える範囲だけでなく、もっともっと遥に広がっているエリアです。
この豊かな敷地や景色を作るために、18世紀には近隣の村の住民を移動させ、土地を買取るようなこともしています。
アニックガーデンは、近年のリノベーションにより多くの訪問者から愛される場所となっています。特にガーデン内の「Poison Garden 毒の庭」は、植物の秘密や伝説に包まれていて、完全ガイドツアーで回る少しスリリングな庭園になっています。
2023年5月にオープンした新施設も。公爵夫人が長年かかって作り上げた「Lilidorei リリドレイ」というファンタジー感いっぱい空間も。コンセプトは、クリスマスを崇拝する9つの氏族が住んでいる魔法の神秘的な村。世界最大の演劇施設に住むエルフィン卿がリリドレイを統治している王なのだとか。
これだけ聞いてもよくわからないとは思いますが、アニック城は全てひっくるめて、1日では見切れないアミューズメントパークのような面も持ち合わせています。
それは、こ巨大な城と歴史を後の世代に残そうと努力されている結果なんだなと感じます。
写真
ここからは写真でもう少し場内をご紹介します。
▼駐車場からガーデンを横目に見て、地図の下の方の道をアニック城に向けて歩きます。
そうすると右手の方に ハヤブサ、タカ、フクロウとの触れ合いコーナーが。勢揃いして止まっていてなんだかカッコよかったです。
▼LION ARCHを通り抜けるとこの場所にでます。ここから右側の方に見えるトンネルへ向かっていきましょう。
▼この中世の雰囲気たっぷりのトンネルを歩いていると、本当にホグワースに来たみたい。
▼ここは、INNER BAILEYです。上の地図で見ると右下の方。INNER BAILEYでは”ほうき乗り”のイベントが開かれています。
ハリーポッターの撮影も行われた場所です。
▼Coartyardの中にはアニック城の歴史の展示がありました。
1825年にジョージ4世の代表として第三代公爵がフランスのシャルル10世の戴冠式へ行くときに乗って行った馬車なのだとか。その時は王室の馬車で、その後公爵家の手に渡ったようです。現在のこの色や紋章は1902年のエドワード7世の戴冠式に合わせて再塗装されました。
2011年と13年の公爵家の結婚式でも使われている現役の馬車のようです。
▼OUTER BAILEY とにかく広くて写真に収めきれません。
▼River Alnが見えています。
アニック城に行くには
多くのカントリーハウスは公共交通機関で行くとなると結構大変です。不便な場所にあることが多く、最寄り駅からもタクシーやバスで向かうことが普通です。出発する場所にもよりますが、近くの街で泊まるなどの余裕の日程で行くのがお勧めです。
今回私は3泊4日の旅行でノーサンバーランド州にある、カントリーハウスを見学しました。その内の一つのカントリーハウス敷地内にあるコテージを予約して、その場所を拠点に車で移動していました。そんな旅行もできます。
最寄駅:Alnmouth Station(アルンマウス駅)
アルンマウス駅はLondon・Kings Cross Station(ロンドン・キングスクロス駅)〜Edinburgh Station(エディンバラ駅)間にあります。
ロンドンからだと約3時間半です。アルンマウス駅から約4マイルでタクシーやバスだと約10分とのこと。タクシーなら予約しておく方が良いですし、バスの時間なども事前にしっかりと調べておく方が安心です。
またはアニックの街で宿泊するのも良さそうです。今回私は街の散策などは全くできなかったのですが、ホテルや宿もたくさんありますし、22時まで空いている大きなスーパーもあります。
▼こちらはアニック城のサイトに書かれている街の紹介です。
アルンウィックは中世の市場町として栄え、現在もその石畳の通り、狭い路地、見事な石造りの建物が多く残っています。今日では、これらの建物には専門店、家族経営のビジネス、宿泊施設、そして元のコーチング・インも幾つか含まれています。
アルンウィック城とアルンウィック・ガーデンを擁するこの町には、イギリス最大級の古本屋「バーター・ブックス」もあり、町の古い鉄道駅に置かれています。また、アルンウィック城ゴルフクラブもあります。
町には活気ある夜の生活もあり、アルンウィック・プレイハウス劇場や映画館、ライブ音楽をしばしば開催する多くのパブがあります。アルンウィックに滞在中は、北ノーサンバーランドの人々や場所を興味深いインタラクティブな展示を通じて生き生きと伝えるベイリフゲート博物館への散歩もお忘れなく。
https://www.alnwickcastle.com/visit/find-us-and-faqs より翻訳しました
こちらを読んでいて、街の散策をする時間があったらなぁと残念に思っています。アニック城だけでも実際のところ1日では見て回れません。余裕があれば数日滞在し、城を見る日、リリドーリを楽しむ日、ポイズン・ガーデンと街散策の日などできたら最高ですね。
アニック城の基本情報
アニック城 Alnwick Castle
住所:Alnwick, Northumberland NE66 1NQ
公式サイト:https://www.alnwickcastle.com/
冬の間は閉館となります。
今回訪問した9月の初旬、中でガイドをしてくださる方が「10月には一家が戻って来られて、5ヶ月ほど滞在されます」と教えてくれました。ノーサンバーランドは地図でみてもわかるように北部なので寒く、雪も多い場所。冬は閉館して家族がゆっくり過ごすのにはいいのかもしれませんね。訪問の計画を立てられる方は公式ページでしっかりと確認をおすすめします!