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「女王陛下のお気に入り」は、イギリスの宮廷でアン女王のお気に入りになるため、2人の女性の画策と戦いがコメディータッチで描かれている映画。実際にあった話がベースになっているのだけれど、奇抜な演出もたくさんあってとても面白い作品です。
この映画をブログで取り上げたのは、ロケ地としても使われた素晴らしい建物やインテリアにも注目していただきたいから!
撮影の方法にどんな工夫があるのだろう・・・天井の見事な装飾や壁に掛かるタペストリーや絵画、オーク材の壁や柱の重厚感、など一つ一つが本当に美しく撮られていて、イギリスに飛んでいき見に行きたくなりました。(実際にハットフィールドハウスには行ったことがありますがずいぶん前のことなので再び目に焼き付けたいと思います)
それではこれから映画の基本情報と、ロケ地を4ヶ所ご紹介します。
『女王陛下のお気に入り』のあらすじ
「女王陛下のお気に入り」(原題はThe Favourite)は、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の、イングランドの王室を舞台にした2018年の映画。
18世紀初頭、フランスとの戦争下にあるイギリスの宮廷では、病身で気まぐれなアン女王を、幼なじみの女官長サラが動かして絶大な権力を握っていた。そんな中、没落した貴族の娘でサラの従妹にあたるアビゲイルが宮廷に現れ、サラの働きかけで、女王の侍女として仕えることになる。
やがてアビゲイルはサラの知らない間に女王と親密な仲になり、次第に野心を膨らませて再び貴族の地位に返り咲く機会を狙っていた。2人の野心と戦争をめぐっての政治的駆け引きが繰り広げられていく。
実際アン王女治世のほとんどがこの2人に動かされていたという史実からインスパイアされた、コメディタッチの歴史ドラマです。
第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリや女優賞を受賞。第91回アカデミー賞でも、女王アンを演じたオリビア・コールマンが主演女優賞を受賞しています。
女官長サラを演じているのは、レイチェル・ワイズ。アビゲイル役はエマ・ストーン。
ヨルゴス・ランティモス監督の広角レンズや魚眼レンズを使い分ける撮り方で、映画の多くが室内撮影であるのに緊張感を感じさせたりしてとても不思議な体験をさせてくれます。
ロケ地の美しさや素晴らしさはこの後にたっぷりとご紹介しますが、邸宅の床の模様がアイデアになったと言われている黒と白の衣装が本当に素敵でした。
おもな登場人物
- アン女王/ Quenn Ann(在位1702年〜1714年):オリヴィア・コールマンが演じる、健康が衰えつつあって、メンタルも不安定な女王。
- サラ・チャーチル、マールバラ公爵夫人/Sarah Churchill, Duchess of Marlborough : レイチェル・ワイズが演じる、女王の親友であり、宮廷での影響力が強い女性。
- アビゲイル・マッシャム、マッシャム男爵夫人/Abigail Masham, Baroness Masham:エマ・ストーンが演じる、没落貴族のサラのいとこであり、女王の新たなお気に入りとなる野心的な女性。
- ロバート・ハーレー 、初代オックスフォード=モーティマー伯/Robert Harley, 1st Earl of Oxford and Earl Mortimer:ニコラス・ホルトが演じる、政治の舞台で巧みに立ち回る若き政治家。女王の信頼を得ようと策を練る。
- サミュエル・マッシャム、初代マッシャム男爵/Samuel Masham, 1st Baron Masham:ジョー・アルウィンが演じる、アビゲイルの野心によって結婚に至った彼女の夫。アビゲイルが宮廷での地位を固めるのに一役買う。
- ジョン・チャーチル 、初代マールバラ公爵/John Churchill, 1st Duke of Marlborough:マーク・ゲイティスが演じる、サラ・チャーチルの夫であり、軍人としての地位を持つ。サラの宮廷での立場を背景にした支えとなる。
- シドニー・ゴドルフィン 、初代ゴドルフィン伯爵/Sidney Godolphin, 1st Earl of Godolphin:ジェームズ・スミス演じる、アン女王をはじめ5人の国王に仕えた政治的背景に影響を与える重要な宮廷人。
『女王陛下のお気に入り』ロケ地4選
実際のアン女王の宮廷はケンジントン・パレスでした。映画ではケンジントン・パレスとして使われたのはハットフィールド・ハウス(Hatfield House)です。映画の撮影の中心はほとんどがこちらだったようです。
その他にもキッチン、議会、スパなどには別の場所が使われています。
アン女王の宮殿として使われた ハットフィールド・ハウス Hatfield House
アン王女の宮廷として使われたのはハットフィールド・ハウス(Hatfield House)です。映画やドラマによく登場しているカントリーハウスなので歴史的にも、エンターティメントの場所としても有名な場所なのです。
『バットマン』(1989) 、『恋におちたシェイクスピア』(1998)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005) 、『シャーロック・ホームズ』(2009) 、『パディントン』(2014) 、『ザ・クラウン』 など・・・
この邸宅の歴史を少し説明すると、現在のハットフィールド・ハウスの近くに王立宮殿があって、その一部が今なお残存しています。この宮殿は、オールドパレスと呼ばれていてエリザベス1世女王の子供ころの住まいであり、女王即位を伝えられた場所としても知られています。
エリザベス1世の跡を引き継いだジェームズ1世は、ハットフィールドが好きではなかったようで、1607年にソールズベリー伯爵であるロバート・セシルに宮殿を譲渡しました。この人物に父親はエリザベス1世の右腕だったウィリアム・セシル (初代バーリー男爵)。王室と深いつながりのある一族なのです。
ロバートは、建築に対して情熱を持っていて宮殿の大部分を解体して現在のハットフィールド・ハウスを作り上げました。ジャコビアン様式と言われるジェームス1世の時代の特徴を持った本当に美しい邸宅の中は映画の中でたっぷり見ることができます!!
第二次世界大戦中には、戦争捕虜の民間生活への復帰を支援する施設として利用された歴史も。400年間セシル家の邸宅で受け継がれている歴史的に重要な場所は一般にも公開されていて見学ができます。
どの部屋がどこに使われたのか?
アン王女の寝室に使われていたのが、James I Room。歴史でも紹介しましたがハットフィールドの建物や領地をセシル家に譲ったのはジェームス1世。映画ではあまり映さないようにしていたのだと思いますが、暖炉の上部にはジェームス1世の銅像がどんと立っていてなかなかの迫力です。
サラの寝室として使われたのが、Library。本当は壁一面に本がずらりと並んでいるようですが、木で覆い隠されています。
執務室や応接間のように使われていたのがDining Room。
宴会やアヒルレースに使われていたのがGreat Hall。
登場人物が行ったり来たりしていた長い廊下はLong Gallery。実は似たような長い廊下が登場しますが、そちらはこのあとに紹介します。
キッチン Hampton Court Palace
アン王女の宮廷のキッチンの撮影に使われたのは、本物の宮廷キッチン。ハンプトン・コート・パレス(Hamton Court Palace)にあるチューだ朝の巨大なキッチンです。
映画の中でもオーブンの上の壁がススで真っ黒になっていたとおり、長年使われてきたのがわかります。
ここで大勢のスタッフが大量の食材の中忙しく動き回って料理を作っている様子が。
実際のハンプトン・コート・パレスは、1515年に建てられた大司教トマス・ウルジーの豪華な邸宅だったのですが、英国王ヘンリー8世がウルジーから取り上げて大幅に拡張して宮殿として作り替えました。
ロンドンの南西部のテムズ川そいにある宮殿はチューダー建築の傑作。後のステュアート王朝とジョージ王朝による改築も加えられ、そのたびに建築様式が追加されています。
映画ではほとんど登場しませんが、宮殿の内部は、歴史的な絵画、壮大な階段、そしてロイヤルファミリーの生活を垣間見ることができる豪華な部屋の数々。外に目を向けると、庭園もまた見事で、美しく手入れされた花壇、迷路、広大な公園が広がります。
ヘンリー8世の5番目の妻、キャサリン・ハワードは不貞の罪で処刑されていて、彼女の幽霊や悲鳴が廊下から聞こえるなんて噂もあります。
ちなみに、ヘンリー8世の後は国王はこのようにつながっていきます。
- ヘンリー8世の後、エドワード6世(1547年 - 1553年)
- メアリー1世(1553年 - 1558年)
- エリザベス1世(1558年 - 1603年)
- ジェームズ1世(1603年 - 1625年、スコットランド王としてはジェームズ6世)
- チャールズ1世(1625年 - 1649年)
ーイングランド共和国(1649年 - 1660年)の時代ー - 王政復古後、チャールズ2世(1660年 - 1685年)
- ジェームズ2世(1685年 - 1688年)
- ウィリアム3世とメアリー2世(共同統治、1689年 - 1702年、メアリー2世は1694年に死去)
- アン女王(1702年 - 1714年)
さてもう二つここでご紹介しないといけないのは、映画内で登場するもう一つのロングギャラリー。こちらはハンプトン・コートにあるカートン・ギャラリー(Cartoon Gallery)です。画像がないのでこちらを見てください。
この空間はラファエロがシスティーナ礼拝堂用にデザインしたタペストリーの下絵(Cartoonと言います)を額装して飾るために設計された部屋。現在オリジナルはロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に貸し出されています。ラファエロのタペストリー自体も特別な時にしか飾られないそうなのでかなり貴重なものです。
そして、ハンプトン・コートの中庭は、ミュージシャンが演奏をしアン王女から「ストップ!」と怒鳴られて退散してく場面にも使われていました。よく見ると建物の雰囲気が全く違うのであれ?と思ってしまうかも。
ロンドン中心地から電車でちょっとした旅行気分に行けるハンプトン・コート・パレスにもぜひ足を運んで見てください。
議会として使われた コンヴァケーション・ホール(Convacation Hall)
オックスフォード大学のボドリアン図書館内の2つの部屋が、下院の壮大なセットとして使用されました。討論室として使われたのはコンヴォケーション・ハウス。両側に議員たちが座り、アン女王が奥の窓の前で演説をしていました。
一度土地税の導入を進めようと話しだす前に、ハーレーより先手を打たれ言葉に詰まった女王は倒れ込む演技を見せます。その後ロビーでサラに励まされる場面で使われたのがもう一つの部屋ディニティー・スクールです。
どちらも天井装飾の美しさに注目です!!
スパ・使用人エリアに使われた ダンソン・ハウス(Danson House)
アン王女とサラが泥風呂に入る場面覚えていますか?
白い壁に高い天井、窓からは光がたっぷりと入ってくる美しい部屋でした。このスパの撮影はダンソン・ハウス(Danson House)で撮影されました。
他にはアビゲイルたち使用人たちのスペースもこちらで撮影されたようです。
ダンソン・ハウスは、サー・ジョン・ボイドが1766年に彼の二番目の妻キャサリン・チャポーンのために建てた邸宅です。もともとは、イングランド銀行の建築家でもあるサー・ロバート・テイラーによって設計されました。その後廃墟の状態に陥っていたところをイングリッシュ・ヘリテイジが重要な危機に瀕している建物に指定し10年間にわたる修復が行われました。2005年には一般公開され、現在は5月から9月の年4日間だけ公開されています。
これははっきりと情報があるわけではありませんが、Wikipediaに載っているダンソン・ハウスの地下キッチン。こちらが泥風呂の部屋だったのではないかなぁ・・・こちらがあのように美しい空間になっているのかも。考えただけでもワクワクします。
まとめと感想
この映画友人にお薦めされていたのですが、本でいうところの積読?。U-NEXTのマイリストに登録していたけれど見ていませんでした。
今年同じ監督の「哀れなるものたち」(The Poorthing)を見たいなと思い、「女王陛下のお気に入り」も見ることにしたのです。
見るタイミングが変ですね・・・
もっと早く観ればよかった!!本当に良かったです。「哀れなるものたち」でも同様ですが、美意識の高さが全面から伝わってきます。カントリーハウスや中世の建物ももちろんそれだけで美しいのですが、現代の技術やエッセンス(カメラワークやライティング、インテリアのセッティングやファッション、ジョークや言葉使いなど)が加わってより魅力が増すような気がします。
歴史的にあっている間違っているというのを超えて楽しめました。歴史的な事実と、創作部分も楽しむことができるなんて素晴らしいです。
(参考)
https://www.hatfield-house.co.uk/
https://www.hrp.org.uk/hampton-court-palace/the-favourite/#gs.49fqku
https://www.imdb.com/title/tt5083738/locations/
『女王陛下のお気に入り』はどこで見ることができるか?
最後に「女王陛下のお気に入り」をどこで見れるかまとめておきます。
現在(2024/2/4)私が普段動画を鑑賞するのに使っているU-NEXTは配信がなくなっています。他にはアマゾンプライムビデオ、Netflix、DVDなどがありますので下にご紹介しておきます。
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